手根管症候群の痛みは仕事や家事にも大きく影響します。でもしっかりケアすれば手根管症候群でも仕事を続けることはできます!
そこで今回は手根管症候群について詳しく、そして可能な限りわかりやすく解説していきます。これを読めば手根管症候群の原因や治療方法がだいたい理解できますよ。
手根管症候群の「手根管」ってどこ?
そもそも手根管症候群てはどんな疾患なのか理解する前に、まずは手根管について理解する必要があります。
手根管は「手根」にある「管」と言い換えられます。
手根とは「手の根」部分なので、手の付け根あたり、手首と手の平の間あたりと理解してください。
次に「管」ですが、これはいわゆる管状の組織があるわけではなくて、管のようなトンネルになっている部位を指しています。
こちらは右手の付け根の断面図です。
このイラストでいうと青い部分が手根管になります。横手根靭帯と手根骨に囲まれて管っぽくなっているのがわかります。
横手根靭帯(屈筋支帯ともいう)は、尺骨側にある豆状骨と有鉤骨鉤からなる内側手根隆起と、大菱形骨結節と舟状骨結節からなる外側手根隆起の間に渡わたっています。
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手根管症候群の原因は?なりやすい人は?
手根管のことがわかったところで、手根管症候群とはどんな疾患なのでしょうか。
簡単に説明すると、手根管症候群とは何らかの理由で手根管で正中神経が横手根靭帯に圧迫される状態です。
手根管症候群の原因は特発性の場合が多いです。特発性とはつまり「何が原因がわからないけどいきなり発症した」とういこと。簡単にいえば原因不明です。
妊娠中や授乳中、閉経後の女性に多いので、ホルモンバランスとの関連も推察されています。
わかりやすいのはパソコンのキーボードやマウス作業、自転車やバイク、ゲーム、ピアノ、ギターなど、手首を過度に使うことによって腱鞘炎を起こし、手根管症候群を併発する場合もあります。
その他、透析中の人にも起こりますし、手根管付近に腫瘍(=できもの)があると正中神経を圧迫する可能性もあります。
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手根管症候群の症状は?
手根管症候群ではどのような症状がでるのでしょうか。
その答えは正中神経が圧迫されているという状態から考えればわかりやすいです
神経が圧迫されているのでしびれや筋肉の異常(ひどい場合なら筋肉が痩せ細る筋萎縮)が起こります。
どこにしびれや筋力低下がでるかというと、正中神経が関わっている領域にでます。
たとえばこのイラストでいうと中指や人差し指、親指に加えて、薬指の中指側がしびれがでたり、感覚障害がでます。
筋肉の異常に関しても正中神経が関わっている領域に出現します。代表的なものは、親指(母指)付け根の母指球の筋肉が萎縮します。
母指球はこのあたりですね。
あと筋肉に異常がでますから握力低下をきたしますし、指の細かい運動ができなくなります。これの代表はオッケーサインができなくなることです。
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手根管症候群は何科を受診すればいい?
手根管症候群は神経や靭帯、筋肉の問題ですから、受診されるなら整形外科になります。
ひとつだけ注意があるとすれば、手は整形外科の中でもけっこう特殊な領域で、ハンド(手)を専門的に診る先生は少ないです。
基本的には町の整形外科でもいいと思いますが、もし不安でしたら大きな病院で手を専門にされている先生を受診されることをおすすめします。
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手根管症候群の検査
手根管症候群では以下のふたつの検査が有名です。
tinel sign(ティネルサイン)
手根管部分を打鍵器(医療用のハンマー)で叩くと、正中神経領域がしびれや痛みがでれば陽性です。
外国の動画がありましたのでいちおう載せておきます。(0:35くらいから)この動画では打鍵器ではなく指先で叩いています。
Phalen’s Test(ファレンテスト)
手を大きく掌屈させて1分以内にしびれや痛みが増強するかどうか確認します。
こちらも同じ人の動画です。(1:00くらいから)
その他
握力などの筋力検査、母指球の萎縮の確認、正中神経の伝導速度測定などが行われます。
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手根管症候群の治療ついて
では手根管症候群の治療の流れについてご紹介していきます。
手根管症候群の治療の流れについては日本神経治療学会のガイドラインに以下のように書かれています。
手根管症候群の保存的治療としては,ステロイド手根管内注入,ステロイド内服,非ステロイド系消炎薬,スプリントが行われている.その他に,利尿薬,ビタミン剤,ヨガ,運動療法,超音波療法,レーザー灸療法などが試みられている.
引用) 標準的神経治療:手根管症候群
つまりステロイドを飲んだり、湿布をしたり、スプリント(サポーターやシーネ固定)をしたりするってとこですね。痛みが強い場合には手根管にステロイド注射もします。
その他、神経障害に効果のあるビタミン剤やリハビリ、超音波やレーザなどの物理療法も行われます。
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手根管症候群のリハビリは?
ここまで読んでいただければある程度イメージできると思うのですが、手根管症候群のリハビリはその原因によります。
たとえば特発性のもの、妊娠や授乳が関係するものなら運動療法うんぬんは正直はあまり効果が期待できません。
しかし、たとえば痛みがあるなら超音波やレーザー、低周波などの物理療法、手首や手指に関節可動域制限があるなら関節可動域訓練、浮腫があるならその対応というように、起きている症状に対しては何らかのリハビリをするべきでしょう。
ただ物理療法だけであまり改善した経験はありませんので、過度は期待はしない方がいいかも。
また腱鞘炎が原因となっているのであれば、腱鞘炎に対するリハビリは行っていく必要があるでしょう。
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手根管症候群に効果的なストレッチとマッサージ
腱鞘炎が原因となっているのであれば、腱鞘炎に対してのストレッチやマッサージをセルフエクササイズとして行えば効果があるでしょう。
具体的には手関節屈筋群(前腕の手の平が側の筋肉)を伸ばすストレッチです。
方法は手の平を上に向けて、手首を反らすように指を引っ張ります。
前腕の手の平側が伸びていればOKです。
あとマッサージについては理学療法士の中には批判的な人もいますが、私はやった方が使いやすくなると思っています。
具体的には先ほどと同じように前腕の手の平側を手首から肘の手前までほぐしましょう。腱鞘炎が原因の手根管症候群であればそのあたりがパンパンに張っていると思います。
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手根管症候群では?冷やす?温める?どっちが正しい?
手根管症候群では冷やすのか暖めるのかどちらが正しいのでしょうか。これも原因によるとしかいいようがないです。
たとえば浮腫があるなら温熱療法と寒冷療法の交代浴は効果がありますが、妊娠や授乳期のホルモンバランスに対しては物理療法は直接効果が期待できません。
手根管症候群の手術とは?
保存療法を行っても効果がなかった場合や、筋萎縮が著明な場合には手術適応となる可能性があります。
手術では正中神経を圧迫して横手根靭帯を切開して、正中神経を開放してあげます。
少し前までは手の平の皮膚を大きく切開していましたが、最近では切開は小さくなりましたし、内視鏡を使った手術も行われるようになりました。
手根管症候群は放置するとどうなるの?
手根管症候群は放っておくとどなるのでしょうか。実は約1/3は自然に治っていくようです。ただし先ほどご紹介したガイドラインにはこう書かれています。
CTSの保存的治療として何を第一選択とするかについてのコンセンサスはないが,35%の症例は未治療で改善が認められる.この自然寛解に関わる因子は,診断時までの罹病期間が短いこと,若年発症,一側性,Phalen徴候陰性が挙げられている.
引用) 標準的神経治療:手根管症候群
要約すると最近発症して軽度な場合、若者の場合など、かなり限局される場合ならという条件になります。
ですから基本的には整形外科を受診して、医師の判断を仰ぎましょう。
手根管症候群は妊娠中や授乳期に受診や治療は可能か?
妊娠中や授乳中に手根管症候群になる女性が多いと書きましたが、妊娠中や授乳中に医師の診察にかかることはできるのでしょうか。
答えは整形外科の診察を受けることはできます。ただし必ずご自身が妊娠していることや授乳中であることを医師に告げてください。
妊娠中も授乳中もお母さんが飲む薬には気をつかわないといけませんし、それに加え妊娠中にはレントゲン撮影にも注意しなくてはなりません。
手根管症候群が疑われて受診した場合、レントゲンなしでも先ほどご紹介したtinel signやPhalen’s Test、筋萎縮の視診、握力の計測などで診察できるはずです。
その上で、医師が可能と思われる治療方針を立ててくれますので、手根管症候群を疑われた場合には受診しましょう。
手根管症候群ではパソコンのマウスやキーボードはどう使うべき?
近年増えているのがパソコン操作が招く手根管症候群です。具体的にはキーボードやマウスを使いすぎることによって手根管症候群を引き起こします。
これに対しては、まずは本来は安静にするのがいいのですが、仕事でキーボードやマウスを使う人はそうはいってられませんよね。
基本的には先ほどご紹介した保存療法の流れで治療を行うのですが、パソコンが原因の場合、キーボードやマウスを使う姿勢を見直す必要があります。そうしないと痛みが引いても再発する可能性が高いです。
具体的にはキーボードやマウスを使うときの角度に気をつけましょう。
長時間キーボードやマウスを使うなら、キーボードのリストレストは必須ですよ。
手根管症候群でテーピングは使わない方がいい理由
手根管症候群でテーピングをすすめられることがあるのですが、私は反対です。
その理由は、
- 手根管症候群の場合、症状のある手に巻くので、片手が使えないので、テーピングを効果的に巻くのは難しい。
- テーピングを巻き続けるとかぶれる。
- テーピングが高い。
などです。
テーピングを使うならサポーターをおすすめします。