手首は解剖学や運動学では手関節といいます。手首はとても細かい動きが可能です。ただし細かい動きが可能だということは、運動に関わる関節や筋肉が複雑だということです。
また機械でもそうですが、複雑な仕組みにはトラブルがつきものです。
トラブルが起こらないように、しっかり手首の運動学を理解しましょう。
人の手首の運動学の基礎
手首は前腕(肘関節と手首の間の部分)の橈骨・尺骨と、手の平の根元になる手根骨で構成されています。このうち尺骨は手首の運動には直接関わりません。
ですから運動学では手首は橈骨と手根骨の間にある橈骨手根関節(とうこつしゅこんかんせつ)と、手根骨の間にある手根間関節(しゅこんかんかんせつ)の合わせたものとされています。
手首は楕円関節に属し、二軸性関節です。
動きとしては手の平の方向に曲げる掌屈(しょくつ)と手背の方向に曲げる背屈(はいくつ)、バイバイするときに手を振る動きである橈骨(とうくつ)と尺屈(しゃっくつ)と、これらの複合運動が可能です。
では手首の各運動についてみていきましょう。
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人の手首の掌屈と背屈
まずは手首の掌屈と背屈です。
掌屈の掌は一文字で「てのひら」と読みます。そして屈は曲げるという意味ですから、掌屈とは手の平の方向に曲げることをいいます。
一方、背屈の背は「手背」のことです。手背とは手の平の逆側ですね。ですから手首の背屈は手背方向に曲げることです。
参考可動域は掌屈が90度、背屈が70度です。
掌屈に主に働く筋肉は橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、長掌筋、補助的には深指屈筋、浅指屈筋、長母指屈筋、長母指外転筋が働きます。
背屈に主に働く筋肉は長橈骨手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、補助的には総指伸筋、示指伸筋、小指伸筋、長母指伸筋が働きます。
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人の手首の橈屈と尺屈
次に手首の橈屈と尺屈です。
橈屈の「橈」は前腕にある橈骨からきています。
ちなみに人が脈をみるときに手首に指をあてますが、このとき計測しているのは橈骨動脈です。つまり橈骨側にある動脈です。
ですから橈屈は脈をみる側に手首を曲げること、つま
り「橈骨の方に曲げること」を意味します。分かりにくければ親指側に曲げることと覚えてください。
一方、尺屈の尺は尺骨からきています。これは橈骨の逆側です。
ですから尺屈は「尺骨の方に曲げること」を意味します。こちらはさきほどの逆で小指側に曲げることです。
さきほどもお伝えしましたが、橈骨と尺屈と繰り返すと手を振る動作になります。
参考可動域は橈骨が25度、尺屈は55度です。
橈骨に主に働く筋肉は長橈骨手根伸筋、短橈側手根伸筋、補助的には橈側手根屈筋、長母指伸筋、短母指伸筋、長母指外転筋が働きます。
尺屈に主に働く筋肉は尺側手根屈筋と尺側手根屈筋です。
最後に手首の掌屈・背屈、橈屈・尺屈の基本軸、移動軸、参考可動域は以下の通りです。
引用) 関節可動域表示ならびに測定法(リハ医学 32:207-217,1995,一部改変)