人の体で一番動くのが今回ご紹介する肩関節です。一番動くということはそれだけ運動方向も多くなります。
それでは肩関節について詳しくみていきましょう。
人の肩関節の運動学の基礎
肩関節は狭義では肩甲骨と上腕の間の関節ですが、広義では鎖骨や胸椎も含めます。球関節に属する多軸性関節です。
肩関節は屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋の6方向に加え、これらを複合した運動が可能です。
指の関節だと屈曲(曲げる)か伸展(伸ばす)の2つの運動しかできませんから、7つの運動というのがどれだけいろんな方向に動くのかある程度イメージができるでしょう。
ただし「いろんな方向に動く」ということは、それだけ関節の構造が複雑化したり、細かい動かすために筋肉がたくさん必要になったりします。
そして一番の問題は精密な関節ほど痛みやすいということ。ですから五十肩に代表されるように、肩のケガや疾患で悩む人が多いのです。
では各運動について詳しくみていきましょう。
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人の肩関節の屈曲と伸展
まずは屈曲と伸展です。
屈曲は曲げることですので、手を前に挙げることです。肩関節の屈曲は挙上(きょじょう)とも呼ばれます。
逆に伸展は手を後ろに引くような運動です。
でしょ?
参考可動域は屈曲180度、伸展50度です。
屈曲180度は頭の上まで手が挙がった状態で、伸展50度は手を後ろに引いた状態を指します。
屈曲に主に働く筋肉は三角筋前部、大胸筋鎖骨部、補助的に烏口腕筋、上腕二頭筋長頭で、伸展に主に働く筋肉は三角筋後部、大円筋、広背筋、補助的に上腕三頭筋長頭です。
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人の肩関節の外転と内転
次は外転と内転です。先ほどの屈曲と伸展と同じく、外転と内転も分かりやすいです。
外転は外に開くこと、内転は内に閉じることをいいます。肩関節でいうと、手を横に開くのが外転、内に閉じるのが内転です。
参考可動域は外転180度、内転0度です。内転の0度は、身体に手を引っ付けるとそれ以上内には入らないからです。
外転に主に働く筋肉は三角筋中部、棘上筋、補助的に働くのは上腕二頭筋長頭、上腕三頭筋長頭で、内転に主に働く筋肉は大胸筋胸腹部、大円筋、広背筋、補助的に働くのは大胸筋鎖骨部、烏口腕筋、肩甲下筋、上腕二頭筋短頭です。
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人の肩関節の外旋と内旋
最後が外旋と内旋です。肩関節の運動で一番分かりにくいのがこれらですが、日常生活には欠かせない動きです。
運動方向と種類でもお伝えしましたが、回旋は「ねじる」や「ひねる」動きです。
では肩をねじるとはどういう動きなのでしょうか?こちらの図をご覧ください。
分かりやすいように手を少し外転させた状態で外旋と内旋させてみます。この図でいうと、手背方向に動くのが外旋、手の平方向に動くのが内旋です。
いまは分かりやすいように手背や手の平と表現しましたが、動いているのはあくまで肩関節です。
一度ご自身でもやってみましょう。図での姿勢での外旋・内旋の参考可動域は、外旋90度、内旋70度です。
外旋に主に働くのは棘下筋、小円筋、補助的には三角筋後部で、内旋に主に働くのは肩甲下筋と大円筋、補助的には広背筋、大胸筋鎖骨部と胸服部です。
肩関節では上記の6つの運動に加えて、それらを組み合わせた運動が可能です。肩をぐるぐる回すのも複合運動ですね。
最後に各運動の基本軸、移動軸、参考可動域は以下の通りです。
引用) 関節可動域表示ならびに測定法(リハ医学 32:207-217,1995,一部改変)