股関節で一番多い疾患といえば間違いなく変形性股関節症です。変形性股関節症は放っておくと自力では歩けなくなり、人工の骨に置き換える手術を行う場合もあります。
変形性股関節症とは?
変形性股関節症と漢字で書くと、何やら難しく感じるかもしれませんね。
変形性股関節症をある理学療法士は次のように説明しています。
関節軟骨の摩耗や変形が起こり、滑膜の炎症や骨の破壊なども加わり、股関節がさまざまな変化をきたす病気です。変形性股関節症は加齢や肥満、スポーツでの繰り返す過度な負担などに起因するものや、先天性疾患に起因するものもあります。
字のごとく変形をきたしていく疾患なのですが、その原因となるのは加齢や肥満、スポーツ、そして先天性疾患などがあるということです。
たとえばこの図の左側は健康な股関節、右側は変形性股関節症を現しています。
右側は白い部分の軟骨が知り減って骨が変形し、ところどころに骨棘が形成されています。
実際のレントゲンではどんな感じなのかというとこんな感じです。
こちらは健康な人の股関節のレントゲン写真です。
大腿骨頭と寛骨臼の間にしっかり隙間があります。(黄色の矢印)
次にこちらが変形性股関節症の人の股関節のレントゲン写真です。
大腿骨頭と寛骨臼の間に隙間がなく、押しつぶされたようになって骨が大きく変形しています。
ここまできて痛みがひどい場合には人工股関節置換術の適応になります。
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変形性股関節症の有病率
股関節疾患の代表である変形性股関節症の有病率は、変形性股関節症の診療ガイドには次のように書かれています。
単純X線診断によるわが国の変形性股関節症の有病率は1.0~4.3%で,男性は0~2.0%,女性は2.0~7.5%と女性で高い
少なく見積もって1.0%なので100万人以上、多ければ500万人近くの人が変形性股関節症と考えられます。
変形性股関節症のポイントは女性の方が発症率が多いこと。整形外科で股関節の痛みで診察を受けられるのは女性が多いのが特徴で、特に中高年以降では要注意です。
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変形性股関節症の原因
女性に変形性股関節症が多いことには理由があります。
解剖学的に男性よりも不利な構造
女性の骨盤は出産が可能な構造になっていて、男性よりも平たくなっています。
平たい骨盤になると重心から股関節までの距離が遠くなるため、股関節にかかる負担が大きくなってしまいます。
あと男性よりも靭帯が緩かったり、筋力が弱いことも股関節に負担がかかる原因となります。
これらに肥満や加齢が加わり、過度な負担が繰り返されることで、変形性股関節症につながっていきます。(一次性の変形性股関節症)
変形性股関節症につながる原疾患になる割合が高い
では筋力が弱くて太り気味の女性だけが変形性股関節症になるかといわれれば、実はそのケースは日本では少なく、日本では二次性の変形性股関節症といわれるケースが多いです。
二次性の変形性股関節症とは、明らかな原因となる疾患があるものを指します。
ここでいう明らかな疾患とは、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全など、股関節の形状に関するものです。
たとえば生まれつき臼蓋形成不全があっても、中年以降に問題になることが多いため、若いうちは気づかずに過ごしている方も多いのです。これらはみな二次性
の変形性股関節症につながる可能性があります。
その他
肥満や加齢、筋力低下などの一次性、先天性疾患などの二次性に加え、最近股関節唇損傷やFAIと変形性股関節症の関係も指摘されています。
また遺伝的な要素もあるといわれているので、親が変形性関節症を患っている人は要注意です。
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変形性股関節症の治療
初期には痛み止めや湿布などの薬物療法に加え、理学療法士によるリハビリなどの保存療法が行われます。また体重が重すぎる場合には食事や生活指導が行われる場合があります。
それでも痛みが改善せず、日常生活が困難になる場合には手術となります。
手術にはキアリ骨盤骨切り術や寛骨臼回転骨切り術など自分の骨を用いた手術と、人工の骨を用いた股関節置換術の2つにわけられますが、近年は人工骨の進化がめざましく、人工股関節置換術が主流となっています。
人工股関節置換術は次のように行われます。
1:傷んでいる大腿骨頭を切る。このとき骨盤の寛骨臼もならしておく。
2:骨盤の寛骨臼にソケットとボール、大腿骨にステムと骨頭ボールを取り付ける。
3・4:それぞれを新しい股関節として組み合わせる。